自分の気持ちよりも、アイツは……俺の気持ちを優先させたんだ。
西内と付き合ったのは……華を忘れるためなのか?
華の気持ちも知らずにアイツは……。
華がどれだけ傷ついたと思ってんだよ。
それとも成は、華の気持ちにも気づいてたのかな。
アイツは、俺のために……?
「なにやってんだよ……アイツ……」
ひとりで、かっこつけやがって。
俺はため息をこぼした。
電車に揺られながら、華の寝顔を見つめる。
胸が苦しい。なんだよ、くそ。
つらくて、たまんねぇ……。
俺は眠る華の肩を抱き寄せる。
華の髪にそっとキスをした――。
なんで泣きそうになるんだよ……俺……。
華……。
華……。
心の中で何度も名前を呼ぶ。
好きだよ……華……。
恋しいとか、愛しいとか。
そんな言葉じゃ足りないくらい。
華のことが好きだ。
誰よりも好きな自信だってあったよ。
幸せにできる自信だってあったんだよ。
なにがあっても、諦めるつもりなんてなかった。
華が答えを出すまで、いつまでも待ってるつもりだった。
だけど……。
だけど……。
俺だって、大切な人は……ひとりじゃない。
成……華……。
俺にとってふたりは。
成の言葉を借りるなら。
世界でいちばん大切なふたりだ――。