川の橋に向かう途中で、色羽があたしのほうに振り返った。
「華っ!早く走れよっ」
「なによ。さっきまで半分寝てたくせに」
「置いてくからなっ」
「待ってよぉ!」
あたしの前を走る色羽の背中を見つめる。
文化祭の時、成のことで泣くあたしを見て、
成に気持ちを残したまま、俺のとこにくればいいって……色羽が言ってくれた。
叶わない恋。
このまま成を想っていても、つらくなるだけなら。
悲しいだけなら。
そう思ったあたしは、少し考える時間が欲しいと色羽に言った。
“焦らなくていい。いつまでも待つから”
あの日、そう言って色羽は優しく頭を撫でてくれたね。
「色羽っ。うしろ寝ぐせついたままだよっ」
色羽の背中に向かって叫ぶと、色羽は立ち止まり頭をぐしゃぐしゃっと掻きまわした。
「直ったか?」
「雑っ!直ってないし」
「まーいいや。別に」
こういうところ、色羽らしいわ。本当。
色羽に考える時間が欲しいと言ったものの、なにをどう考えればいいんだろう。
あれから時間だけが過ぎていく。