「え?なんで謝るの……?」
俺は黙り込む。
西内と付き合ってるのに、華にキスした。
「成くん……?どしたの……?」
「俺もう……西内と付き合う資格な……」
俺の言葉を遮って、彼女は俺にキスをした。
唇がゆっくりと離れる。
彼女は、うつむいたまま言った。
「……別れ話なの?」
「西内……」
「……砂歩は……別れたくない。まだ成くんのこと振り向かせたくて、頑張ってる最中だもん……」
「でも俺……最低なことしたんだ」
西内は顔を上げてニコッと微笑む。
「成くんが他の人と付き合いたいなら別れる……。でもそうじゃないなら……砂歩のために別れるとか言うなら、砂歩は別れないから」
西内は、俺の右手をぎゅっと握りしめる。
「成くんに振り向いてもらえるように、もっと頑張る。だからこのまま……そばにいたい。もう少し砂歩に時間ください」
そう言って彼女は、微笑んだ。
彼女は、いつだってまっすぐな気持ちで俺を想ってくれる。
西内を傷つけるために付き合い始めたわけじゃない。
すごくいい子だってこともわかってる。
付き合いだしてから、なおさらそう思った。
この子を好きになりたいって思った。
いまだってその気持ちは変わってないのに……。
「西内はそのままでいいよ。俺がもっと……」
もっと……しっかりしなくちゃいけないんだ。
「俺が……ちゃんとするよ」
俺の言葉を聞いて、西内は優しく微笑む。
西内と付き合ってから、
こうして西内が優しく微笑むたびに、俺は彼女を傷つけてないかって……ハッとする。
だからいつも。
優しく微笑む彼女に、俺もすぐに微笑み返すんだ。
だけど、そのたびに。
どこか嘘をついてるような気持ちになる。
俺は、いつになったら華を忘れられるんだろう。
「西内……」
「ん……?」
「もっかい……キスしよっか」