草が生い茂る原っぱを通り過ぎ、田んぼのあぜ道をいく。
空は晴れ渡っていて、遠くの深緑色の山々がきれいだ。
さわやかな風が吹く。この町の匂いがあたしは好き。
見慣れた町の景色を眺めながら、あたしたちは歌を口ずさんだり、ふざけあったり。
3人の笑い声が響き渡る。
「いい天気だな~華」
あたしの後ろに座る成がつぶやく。
「そうだね~成」
「おまえら。のんきなこと言いやがって……」
立ったまま自転車をこぐ色羽に掴まりながら、あたしは色羽の後ろ姿を見つめた。
色羽の黒い髪が汗で少し濡れてる。
「色羽シャンプー変えた?いいにおいがする~」
「なっ……人のにおいかぐなっ」
「いいじゃん別に~ケチ~」
色羽の背中、大きいな。
昔は、背も小さかったのにさ。
いまはこんなに男の子っぽくなっちゃって。