「あ、いた」
階段を降りてきた色羽が、俺を見つける。
「成ー。どこ行ってたんだよ?」
「いや、別に」
オバケ役の当番は終わって、色羽も制服に着替えてきた。
「華もいねぇから、ふたり一緒にいるんだと思ってた。華のやつ、当番サボる気なんかな」
「あー、華のことだしさっ、時間になったらちゃんと戻るっしょ」
「まぁーそーだな。成と一緒じゃねーなら、西内と一緒にどっか行ってんのかもな」
「あ、あぁ……」
なんで俺、華が屋上に続く階段のところにいるって言えないんだろう。
ついさっきまで一緒にいたって、どうして本当のこと言えないんだろう。
うしろめたい気持ちでいっぱいだった。
色羽の顔見たら、言えなかった。
「成?どした?」
「いや、なんでもない」
「俺たちも、なんか食いにいこーぜ?」
「うん」
俺たちは廊下を歩いていく。
色羽の顔を真っ直ぐ見れない。
色羽のこと裏切ったんだ。
俺が華にキスしたことを知ったら、色羽は傷つくだろうな。
西内と付き合ってるのにって、軽蔑するよな。
俺のこときっと……嫌いになるよな。
「成」
「な、なに?」
「おまえ、なんかあった?」
色羽の方を見れない。
「なんで?なにもないけど」
俺はうつむいたまま答えた。
「そう。ならいいや」
改めてバカなことをしてしまったと反省している。
なんてことをしちゃったんだ、俺は……。
落ちつけ、俺。
さっきのことは忘れるんだ。
そうだ、忘れる。