少し離れた場所から成と砂歩の様子を見ていたあたしたち。



「俺たち、先に戻ろーぜ」



色羽の言葉に、あたしは小さく頷く。



「行くぞ」



色羽はあたしの腕を掴んで、歩いていく。



歩きながら振り返って、成と砂歩が抱きしめ合うのを見た。



彼女だけに見せる成の姿。



あたしの知らない成が少しずつ増えていく。



そうして、あたしの知ってる成は、どんどんいなくなってく。



これからもきっと――。



「……華?」



あたしは涙が止まらなかった。



「ごめっ……色羽……っ……」



色羽は、人目のつかないグラウンドの隅にあたしを連れていく。



寂しかった……。



寂しくて、どうしようもなかった。



成があたしの知らない人になっていく。



こんなに苦しいなんて……。



もうやだ……。



なんで成のこと好きになっちゃったんだろう。



「華……」



色羽は、泣いてるあたしを包み込むように抱きしめてくれた。



色羽の服があたしの涙で濡れていく。



「気が済むまで泣け」



色羽の声は、いつもよりずっと優しかった。