自分の唇を指先でつまむ。



違う。やっぱり夢なんかじゃない。



色羽にキスされた時の、唇の感触をまだ覚えてる。



「なに思い出してんだろ、あたし……」



恥ずかしくなって自分の顔を両手で覆った。



「はぁ……」



キスしたのは2回目だって言っても、幼稚園の時といまじゃ全然違う。



そういえば、すべり台の上でキスしたのが色羽なら、お昼寝の時間にキスしたのは成ってことだよね。



あたしのファーストキスは、色羽だったんだ。



ていうか幼稚園の時のキスって、ファーストキスっていうのかな?



どっちにしろ、幼稚園の時だろうと今だろうと、



色羽があたしのファーストキスの相手……。



「あーもぉ!成のことで頭がいっぱいなのに、色羽まであたしを混乱させて……」



色羽は、あたしが成のこと好きだって気づいてた。



成は、あたしの気持ちなんかこれっぽっちも気づいてないのに。



なんで色羽は、あたしの気持ち全部わかっちゃうわけ……?



それくらいあたしのこと想ってくれてるってこと……?



胸がぎゅってなる。



好きな人が、他の人を想ってる。



あたしが苦しいのと同じくらい、色羽も苦しかったりするの……?



自分を想ってくれる人を好きになれたら、こんなに苦しまなくてすむのに。



なんであたしは成が好きなんだろう。



なんで成じゃなきゃダメなの……?