鳴らない携帯がなんだかとても嫌で。

それでも電源を切る勇気もない私は、結局鳴らない携帯を何度も手に取る羽目になる。



メールも、着信も。

こういう時のタクは、一切連絡をくれないことを知っている。


恋人の期間は短くても、友達でいた期間があまりに長いから。

どうやってタクがバランスを保っているかも知っている。




会えば、こんなどうしようもない想いは解消されるのに。

一瞬でも顔を見れれば。

タクに触れることが出来れば。


『大丈夫』と手を握ってくれれば。




それが出来なくなると言うことは。

私達は、どうなってしまうんだろう?


タクは、平気なのかな?

私は、どうするのが良かったんだろう。




そんな堂々巡りに落ちて、私は泣いた。

泣きわめく事も出来ず、ただ淡々と泣き続けた。

鼻水が苦しくなれば鼻をかむし。

少し冷静になれば涙は止まるし。

頭だって痛くて、喉も渇く。



マンガみたいに泣いたら夜が明ける、なんてこともなく。

刻々と更けてゆく夜の気配を、ただじっと部屋で感じているしかなかった。




鳴らない携帯は、とても重くて。

それでも手に取らずには居られなかった。



それが、とてつもなく辛くても。

どうする事も出来なかった。