落ち着きを取り戻し始めると、なんて情けない姿を晒したんだろうと恥ずかしくなってきた。

そんな私を見抜くかのようにクスクスと笑うタクに、悔しさよりも安心感が湧いていた。


それもそうか。

一緒にいる時には普通にしてきたことを、ただ電話に変えただけなんだもの。

電話になると強がる私の癖を心配していたタク。

あっという間にタクの言っていた通りになってしまったことが悔しくもあるが、それほど私を理解してくれているタクをとても大事だと想った。




『で?うちのオジョーサンは昨日の夜、どうしてたのかな?』


「え?」


『え?じゃなねぇよ、バーカ。俺が何度電話しても出ない、メールも返ってこない。挙句、携帯の電源が切れるとか。どんだけ心配したと想ってンだ、馬鹿』




タクから響く『馬鹿』の言葉は甘く優しい。

その優しい『馬鹿』を受け止める度、罪悪感が広がっていくのを感じた。



信じていなかったわけじゃない。

むしろ、信じたくて。

事実、信じていた。

でも耐えられなくなっていたのも、事実で。


私は一人でいられなかったのだ。

大崎さんに縋ってしまったのだ。




『亜未?』




何の疑いもなく、真っ直ぐ私を呼ぶ声。

含み笑いをして私をからかう声を出している。

『どーせくだらない意地張って、くだらない理由なんだろう?』とでも言いたげな声。


キュッと唇を噛み締めて、タクの呼びかけに間を開けては駄目、と一瞬で判断する。



戸惑っては、駄目。