二人がいかに心配してくれていたのかを目の当たりにして、ギュッと携帯を握りしめる。


タクからも着信があるということは、私が今日会いに行ったことをカズが伝えてくれた、ということだ。

そして、私がタクに会っていない事実をカズが知っている、ということだ。

後ろめたいことがある人はきっと、こんなに沢山の着信を残してくれることはないだろう。

分刻みの着信が、タクの想いを刻んでくれているようで、少しでも疑った自分が情けなくなった。


それでも向き合うのが怖くなくなる訳じゃない。

言い訳をされたら。

そもそも、その人の存在自体を否定されたら。

丁度いい機会だ、と別れ話まで発展したら。

そんな訳はないと、頭でどんなに否定しても。

渦巻く不安を取り除くことは、簡単なことではなかった。



ギュッとに携帯を握る手に更に力が入り、その手を包むように無骨な手が重ねられる。

その手の先には、さっきまでと同じとびきり優しい笑顔をした大崎さんがいて、真っ直ぐに私を見つめている。

好きになり過ぎて不安を抱えるような大切な人がいるのに、自分のことを大切に想ってくれる人の手で安心する私は。

今でも『一途に拓海を大切にしている』と、胸を張って伝えることが許される存在なのだろうか。


そんな不安も丸ごと包んでくれそうな手をそっと外して、大崎さんに小さく微笑む。

力なく笑った私のことも見透かしてしまいそうな目を少し細めて、電話をするように私を促した。