だけど。
「……え? みんな、なにを見てるの?」
と、よくわからないといった感じで呟く安田くん。
そして、周りをキョロキョロと見たあと、うーん……と首をかしげる。
「……どこ見てるんだろう?」
安田くんのボソッと呟く声があたしにだけ聞こえた。
……ん、あれ?
みんな、安田くんを見てるんですけど?
しばらくして彼は、ひらめいた! というようにうれしそうに言った。
「見てるって……ああ、あそこにいる鳥か! 小さくて可愛いね!」
安田くんはそう言って指をさした。みんなそちらを反射的に向く。
そこは窓で、たしかに窓の向こうの木に小さな鳥がとまっていたんだけど。
「いや、あたしが言いたいのはそれじゃなくって……」
「えっ、ちがったんだ! ごめん! あっ、あと1分で授業だから用件だけ言っちゃうね」
安田くんは時計を見て驚いたように言う。