安田くんの近くに寄ると、彼は微笑んでくれた。



「澤上さん! よかった、来てくれて。ちょっと話したいことがあって」



澤上はあたしの名字だから……えっ、ホントにあたしに用があったんだ!



安田くんがそう言った瞬間に「キャ───!」とあがる女の子たちの悲鳴。



「あの安田くんが澤上さんを! 信じられないっ!」



「都築くんといい安田くんといい、なんで澤上さんばっかり……!」



嫉妬に狂ったように叫ぶ女の子たちの声。中にはハンカチが裂ける音が聞こえる。



ホントにごめんなさい! 実はあたしもよくわかってないんです!



「あ、あの。安田くん……」



「ん、なに?」



「あの、みんな見てるから……要件はまたこんどおねがいできるかな?」



ここはいったん引いてもらおうと安田くんの名まえを呼んだ。



……だって、この中で要件は話しづらいし、みんなに迷惑がかかりそうでまたLINEで言ってもらおうと思ったの。