清楚とか可愛らしいとか、私には分不相応な褒め言葉だって思う。

それでも、田中先生が言ってくれた言葉だから、だから――素直に嬉しかった。

先生は器用にお世辞を言って相手を喜ばせようとする人じゃないから。

そして、なにより「あなたらしくて――」という言葉は、ときめく胸をさらにじんと熱くした。

先生は、私の私らしさを気に入ってくれているんだなって。

なんていうか――うまく言えないけれど、先生が認めてくれるのなら、私は私でいいのかな、って。

すごく嬉しくて、嬉しすぎて……どんな顔していいのかわからなくて困ってしまう。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか(たぶんわかっていないと思う……)、先生は淡々と言った。

「技をかけるといっても、投げたり転ばせたりするわけではないので。心配は無用です」

「そうなんですね……」

先生的には私がスカートの心配をして困っているように見えたらしい……。

それはまあ、派手にめくれてパンツ丸見えなんてことになったら困るけど、もちろん。

そして、先生は思いほのか私に技をかける気まんまんのようだ。

「どうでしょう? ひとつかけられてみますか?」

「それじゃあ、ひとつ……」

何なんだろう、この会話は……ちょっと押しに負けたような? 

「奥さん、騙されたと思ってひとつだけ!」「そうねぇ、それじゃあひとついただこうかしら」みたいな? 

けど、こういう機会ってめったにないし。確かにちょっとおもしろそう。

先生が言うには、痛い思いはしないようだし。パンツが見えることもないようだし。

「お、お手柔らかにお願いしまっす」

「了解です」

袴姿の先生とワンピース姿の私が少し距離を取って向かい合う。

自分で言うのもあれだけど、私はおそらく好奇心旺盛なほうだと思うし、なにしろけっこうなおもしろ好き。

にわかに気持ちが盛り上がって、今はもうかなりやる気まんまんだ。

とりあえず、格闘漫画で見たことのあるポーズを頭に思い浮かべ、「かかってきなさいっ」という調子で身構えた。

「いや、そういうのは必要ないので……普通にしていてください」

「そ、そうですか……」

なんか残念……っていうか、やる気が完全にからまわっていて恥ずかしい。

私はちょっとしゅんとしつつ、先生の指示に従うことにした。