技をかける、ですと? 

まったく思いがけないお誘いに、なんというか……上昇していた脈拍も体温もいきなり正常に戻った(戻された?)気がした。

私がはてなと首を傾げると、先生は「ああ」と何か思い出した様子でさらに言った。

「もとい。技でもかけられてみますか?」

はい? またまた頭にはてなマークがいくつか浮かんだ。

とりあえず、どうやら先生には透視の能力はなかったらしい。そのことはわかった。

それにしても……。

「えーとですね、それってつまり合気道の技をってことですか?」

「そうです」

「先生が私に技をかける、と?」

「山下さんが俺に技をかけられます」

「なるほど……」

ずいぶんおかしな言い回しだったけど先生の提案はわかった。

そりゃあ、技をかけるなんて私にできるわけないんだし。

そう……そうね、うん。いや、でも……。

「先生。私、こんな格好なんですが……」

色は地味めで露出度も低め、といっても一応はお呼ばれ用のワンピース。

合気道の技とやらがどういったものかはよくわからないけど、かなり準備不足な服装であるのは間違いない。

「その服、とてもいいです」

「はい?」

は? この格好が合気道に適していると?

「ラボにいるときとはまた印象が変わりますね」

「えっ……」

いくらなんでもスカートで合気道とかあるわけないか、うん……。

っていうか、ひょっとして――。

「山下さんによく似合っていると思います」

私、先生に褒められてる?

「清楚で可愛らしくて、あなたらしくてとてもいい」

先生は照れもせず臆面もなくそう言うと、私の姿をしげしげと眺めた。