「頑張れよ」

「おう」


照れ臭そうに祥太郎は拳を作った。
それに俺も拳を作って合わせると、笑い合った。


教室に戻ると、俺を見つけた久美は顔を引きつらせる。
その顔が可笑しくて、顔を背けて吹き出した。


久美は俺が笑ったのを見て、きっとむくれてるだろう。
それを想像しただけでも頬が勝手に緩む。


自分の席に座ると、久美が寄って来る。


「遼佑、笑ったでしょ」

「いいえ、笑ってません」


敢えて顔を見ない様にして言うと、久美はまたムキーってなっていた。


「祥君、…何か言った?」


そのとばっちりは祥太郎にまで及ぶ。
久美がじろって祥太郎を睨んでいる。

祥太郎はカミングアウトした手前、何も言えないのか、気まずそうに久美から視線を逸らしていた。