久美は「先に行くから!」と、真っ赤な顔をしたまま逃げる様にその場を立ち去った。
祥太郎は照れた顔を隠しながら、俺を見る。
「…からかったな」
「朝、俺の大事な右足が可哀想な事になったからな」
「ちょ、それはお前が先に俺をあんな起こし方したからだろ」
「あははははは」
「この、全く!りょう!」
困った様に笑う祥太郎。
尚も笑い続ける俺に、祥太郎は口を尖らせながら
「言っておくけど、キスはしてるからな」
と、恥ずかしそうにカミングアウトをした。
それに俺の笑いが止まる。
「おっと、まじかい」
そう返したら、少しだけ頬を赤く染めながらドヤ顔を見せた祥太郎。
「まあ、まだ数回だけど」
「ふうん」
少しだけ複雑に思ったけど、きっと“今の俺”ならそれを朗報と受け取るだろう。