お尻をパンパンと手で払い、どうやら倒れるときに手放してしまったらしい、ソラに繋がれたリードを右手で拾いました。
「じゃ、行こっか。」
今度は横断歩道の手前でしっかり左右の確認をしてから、それでも一歩一歩の足取りに注意しながら大通りを渡って行きました。
「高田西高校のヤスダ君、か。
ダイト、タイト・・・なんて読むんだろ。」
大斗の二文字を頭に浮かべながら、自分でもほぼ無意識のうちに呟いていました。
それをヒロトと読むのが分かるのは、もう少し後になってからのことでした。
「早く帰って晩御飯の支度しなくっちゃ。
ソラ、ちょっと急ぐよ!」
暗くなりゆく空を見て、事故のせいで帰りが少し遅くなったことを悟った私は足取りを速めました。
「ワン!」
ソラは待ってました!とばかりに、私の前を走りだしたので、リードを掴んでいた私は右手を引っ張られました。
「待ってよ!走るのはしんどいってば!」
急げと言ったり、待てと言ったり、自分勝手なセリフを吐きながら、引っ張られた右手に大斗君の感触を思い出していました。