「強く引っ張ってごめんさい!怪我しませんでしたか!?」

地面に打ち付けたお尻以外に痛いところは無かったので、とりあえず頷きました。

「よかったぁ、ついとっさに手を引っ張っちゃたんで。
 もうちょっと優しく助けられたら良かったんですけどね。
 でも、何も無くて良かったです。じゃあ。」

そう言い残して彼はすぐにその場を立ち去ってしまいました。

大きなエナメルバッグを抱えていて、そこには

 高田西高校
   安田大斗

とプリントされていました。

「あ、・・・」

何か声をかけようと、せめてお礼だけでも言わないと、と。

そう思ったのですが、思った通り口が動いてくれません。

彼のカバンに書かれた文字を頭に刻み込むだけで精いっぱいでした。