とは言え他人設定にしている以上、下手な事言ったらバレるし、言える憎まれ口なんてないけど。
せっかく由宇が言い返せない状態なんだから何かしら言ってやりたいと思いつつも、課も違う以上自分から進んで関わるのもおかしいと思って諦める。

由宇のひやかしを諦めて、ただの荷物持ちとしてついた融資管理課。
同じフロアにあるから時間にしてものの1、2分でつく距離だ。

「預金管理課ですー。メール便とコピー用紙がまたうちの方に来てたので」

広兼さんが声をかけると、書類やパソコンに向いていた視線が一気に集まる。

実は、融資管理課って少し苦手だ。
比べる事じゃないけど、預金関係よりも作業が細かい分、いつきても雰囲気がピリピリしてる気がする。
何度か見た事あるけど、書類も細かいし、私だったら見逃しそうなチェックポイントがたくさんあったのを覚えてる。

まぁ……単に今の預金管理課のメンバーが緩いってだけなのかもしれないけれど。

すぐに男性社員がひとり立ち上がってこちらに来てくれる途中で、振り返って「星崎もこい」と由宇の名前を呼んだ。
由宇は、女性社員に何かを教わっていたみたいだけど、呼ばれてすぐに立ち上がってこちらに来る。