「あ、やった。また融資管理課のメール便がうちにきてる」

午後一に配送されるメール便。
それぞれの課専用のビニールケースに入ってくるそれを開けるのは、誰とは決まっていないけれど席が近いからって大体広兼さんが受け取って開ける事が多い。

そして間違えて配送されてきた融資管理課宛のケースを見て文句を言うのもいつもの事だから、私も普段なら気にもとめないけれど……。
『やった』という言葉が入っていたように聞こえて思わず見ると、満面の笑みの広兼さんと目が合った。

……変だ。いつもなら、60代のメール担当の社員相手に、あいつまじ使えねーくらいの事を言った挙句、私に融資管理課まで渡してきてとか命令するのに、『やった』?
なんでなのか分からず、顔をしかめて見ていると広兼さんがニコニコしながら言う。

「姫川、一緒に融資管理課行こう」
「え……? あ、ゆ……星崎さんを見にって事ですか……?」

由宇と危うく呼びそうになったのをなんとか押さえて聞くと、広兼さんが「そう」と頷く。

「え、でも私はもう見たので、ひとりでどうぞ」
「一緒にきてよ。じゃないと、わざわざイケメン新入社員見に来たミーハーだと思われるでしょ」
「……でも、実際そうじゃないですか」
「そうだけど、融資管理課の人たちにそう思われるのは嫌じゃない」
「思われないですよ。ちゃんとした用事だし」
「いつもは姫川が行くのに急に私が行ったらおかしいじゃん」
「ふたりで行く方がおかしくないですか? 重たいモノでもないのに」