「優希ちゃん見つけた!」

 紅夜達の話を聞いた後、連絡先を交換して別れた優希は数日間変わらない学校生活を送っていた。
 紅夜から一度送られて来たメールに、誰かが訪ねるか連絡するまでは今まで通り過ごしていてほしいとあったからだった。
 今日は天気がよく、気分よく帰れると思って放課後の教室にいた優希。
 帰り支度をしていると勢いよく教室前方の扉が開かれ、聞き覚えのある声が彼女の名前を言った。

「――春陽先輩?」

 息をはずませながらも笑顔で春陽が教室内へと歩みを進めて来る。

「誰もいないみたいだし丁度よかった。今日活動あるからよろしくね」

 直接やって来た春陽に目を丸くしながら優希ははいと返す。
 小声でキューブはいつも持っているかと聞かれ、頷くと花が咲くように笑った。

「よかった! それじゃあ後でメールするね」

 一度優希を抱きしめて春陽は教室を去って行く。
 彼女の勢いに圧倒され、少し経った後にハッとした優希は急いで帰り支度をすますのだった。





 午後八時前、学校指定のジャージを着て優希は学校の校門前に立っていた。
 雲が月を隠し、湿度の高い汗ばむ空気が雨の気配を知らせている。
 下校途中に春陽から送られて来たメールには夜八時に校門前集合とだけ書かれており困惑したが、その後に補足するように送られて来た奏太からのメールに優希は感謝した。
 奏太から来たメールによると、Memories Defense Forceが活動するのは夜間。
 しかし、夜間といっても実際はキューブの力により作られる仮想世界の中で活動するため、現実での経過時間は数分から長くて数十分という。
 帰宅時間が深夜になることはないから安心して下さい、という文面を見て優希は息を吐いた。

(お父さんにはコンビニに行って来るとしか言いようがなかったからよかった……)

 まだ誰も来ないなとぼんやりしていると、風が吹いて髪が揺れた。

「――篠崎さん」

「……っ!」

 予期しない呼び掛けに優希の体がはねる。
 一瞬の間に優希の目の前には紅夜をはじめとした四人が立っていた。