「あの、これからよろし」

「ちょっと待ったー!」

 大声を上げた春陽が優希の口をふさぎ言葉を止める。
 口をふさがれてもごもごとする優希に春陽は言葉を続ける。

「その言葉は薫さんもいる時に言ってほしいな!」

「――ああ。意外と気にしますよね、薫さん」

 奏太がクスクスと笑い出せば春陽も紅夜も笑い出し、優希は戸惑いながらも首を縦に振った。

「これからは見習いじゃないからな。辛くてもついて来いよ?」

「――はい!」

 不敵に笑う紅夜を見上げ、優希はあたりに響く声量でそう答えたのだった。





 ――雨の日に繋がった縁は優希に未知の世界を教えた。
 二つのキューブと組織、もう一つの世界の存在。
 知らないうちに忘れていた思い出、真実を知った時の衝撃と決意。
 手に入れた不思議な力。
 そして夢現の真相。
 どれも夢のようだがどれも現実で。

 道を選んだのは紛れもない自分自身なのだから、これから起こるどんなことも精一杯乗り越えていこうと胸に誓う。

 まわりには仲間がいる、父もいる。
 思い出の中には母もいて。
 そう思うだけで優希はずっと心強いと感じながら。

 現実へと帰るべく仲間と並んで一歩を踏み出した――――。