「最初に会った時、紅夜さんの思い出を見た篠崎さんは謝っていました。見たくて見たのならあの慌てようは不自然ですから」

「でも……っ」

「優希ちゃん、いいんだよ」

 謝ろうとする優希を今度は春陽が止める。
 春陽は柔らかい笑みを浮かべて優希の手を強く握った。

「春陽達はお父さんのお兄さんとお嫁さん、それに紅夜さんが支えてくれて、今は薫さんもだけどね。みんながいたからこうしていられるんだ」

「――正直、最初は記憶をなくしたいくらいつらかったです」

「でも今はね、お母さんとお父さんの最期は悲しいけど、ひた隠しにしたいわけじゃないから。だから、謝らないでほしいな」

「それにまだ見習いでも篠崎さんは僕達の仲間です。きっかけがあれば話すつもりでした」

「春陽達が助けられたように今度は優希ちゃんを助けたいって思う。だから困ったことがあったら何でも言ってね!」

 背中を見せていた奏太はこちらを向き、春陽は優希の手を握ったまま二人で微笑む。
 二人の優しい笑顔に幼い日の母の笑みと数日前に色々と話した父の笑みが重なって見え、優希は何倍にも嬉しくなった。

「ありがとうございます」

 謝罪が必要ないのなら、感謝を精一杯伝えよう。
 優希は思いをこめて一言を伝えた。