「優希ちゃん久しぶりー!」
翌日の夜、集合場所になっている校門前に行くと、そこには春陽と奏太が先に到着していた。
優希が来たことに気づくと、春陽はスマートフォンを奏太に預けて優希に駆け寄って来る。
奏太は急に押しつけられて眉を寄せたが、小さく息を吐いて自分の機種と合わせて制服のポケットへとしまった。
「元気だった?」
「はい、まあ……」
実際、熱を出していたので元気とは言えないが、心配をかけまいと優希は曖昧に答える。
その言葉に奏太は目を細めてふぅん、と何とも言えない声を出す。
「この前病院に入って行く人が篠崎さんに似てましたけど。似てる人なんてそうそういるんでしょうか……?」
「え! そうなの!」
大丈夫? 大丈夫? と心配そうに聞いてくる先輩によくなりました、と答えて優希は思わず苦笑いをして奏太を見る。
「見られていたなんて全然気づきませんでした……」
「偶然近くに用事があったんです。――僕だって心配くらいしますよ」
「え……?」
「何でもありません」
優希が聞き返すと奏太は顔を背ける。
しかし頬が赤くなっているのが見えて思わず笑みがこぼれる。
春陽が奏太くん照れてるー、と奏太の前に回りこんで明るい声を出すものだから、奏太の耳までが熱を持った。
「……っ、そろそろ時間だから行きますよ!」
耐えられなくなった奏太が声を大きくして腕に通されたチェーンの先のキューブを揺らす。
「美原さん達は……?」
「薫さんは今日残業だからお休みだよ。紅夜さんもギリギリまで仕事するって言ってたから、仮想世界で集合だって!」
答えながら春陽は優希と手を繋ぐ。
二人が手を繋いだことを確認した奏太が言葉を続ける。
「仮想世界へ移動します」
「了解!」
「ちょっ、春陽……っ」
明るい声で答えた春陽は奏太とも手を繋ぎ、三人並んだ状態で光に包まれた。