治臣が家まで知っていたことにさらに驚いた優希。
目を丸くさせて首を傾げる様子に我慢出来ないといったように治臣は声を出して笑い。
「十年前、あなたを送って行く紅夜の後をついて行きましたから。途中であなたを捜していた男性に会って引き渡していましたが、付近の表札から察しがつきます」
と、種明かし。
混乱を残しながらも弱い雨の中、降りた車の前でお礼を言う少女に、体をしっかり休めるように言い聞かせて去って行ったのだった。
家に帰ってしばらくした後、熱が再度出てしまった優希は解熱剤を飲んで体を休めた。
そのおかげか翌日の朝にはいつもの調子を取り戻した。
日曜日ということで家の中には父もいたが、急ぎの仕事が入ったために娘の体の調子を心配しながら外出していった。
家事をすませた優希はソファに座り、何気なくつけたテレビではバラエティー番組が放送されている。
優希は映像をぼんやり見ながらも考えるのはやっぱり治臣が言った言葉で。
(自分で答えを見つけるってどうしたらいいんだろう……)
何を忘れているのか分からないのに自分で見つけなければならない。
うんうん唸って考えてみてもやはり出て来ず、優希はテレビの電源を消して立ち上がった。
(出かけてみよう! もしかしたら外に何か手がかりがあるかもしれないし……)
念のために伝言を書いてテーブルに置き、父の携帯に同じ内容のメールを送る。
それから財布と携帯、折りたたみ傘を小さなカバンに入れ、施錠を忘れずに家を出た。
空は鈍色に覆われていたが、休日ということもあってか午前中の街を歩く人の数は平日よりも多く感じられる。
手がかり探しと気晴らしを兼ね、優希は本屋に入ったりCDショップに入ったり、雑貨屋に寄ったりと時間を使っていった。
(特に手がかりはないな……。ビックリしたことはあったけど……)