「――それで、ワタシに会う方法を考えすぎて今度は熱を出したのですか?」
「はい……」
診察室にて目を丸くして聞いてくる治臣に優希は顔が熱くなるのを感じながら頷いた。
――ロックキューブを持つ中で一番話を聞いてくれそうな治臣に話を聞こうと意気ごんだ優希。
しかし、行きつけの病院の医者と言うことしか情報がなく、親しい間柄でもない。
怪我や病気がないのに病院に押しかけることもはばかられ、数日間悩んだ挙げ句熱を出した。
風邪が治って間もない発熱を父に知られ、直ぐに病院に行って来るように家を押し出された。
今日は土曜日だが行きつけの病院が休日の診察を受けつけていて、さらに担当医が治臣だったことは運がよかった。
熱は辛いが治臣と対面を果たせたのである。
「ワタシに話があるのでしたら、まずは熱を下げてからにしましょう」
治臣は静かにそう言い、椅子を動かしてカルテに文字を記入していった。
「落ち着きましたか?」
「はい」
解熱効果のある注射をしてもらい、外来の点滴患者などが使用するベッドを一つ借りて優希は体を休めていた。
ある程度時間が経つと治臣が室内にやって来て優希の顔色をうかがう。
「――だいぶ下がりましたね。念のために内服薬の解熱剤を出しますので、熱がぶり返した場合は飲んで下さい」
優希の額に大きな手をあて、熱の具合を確かめた治臣が柔らかく笑う。
仮想世界で対面した時とは違う様子に優希は何と言葉を返したらいいのか分からなくなった。
視線をさまよわせる様子を見た治臣は手を離しながら小さく笑い声をもらす。
「とんでもない結果になったり、困る様子だったり。本当にあなたは千夏に似ていますね」
「!」
千夏と言う名前に反応を示す優希を見た治臣は、気になりますか、と問うて来る。
「はい。北上先生に聞きたいことが二つほどあるんです」
「いいでしょう。ワタシが話せることならば話します。――そのかわり、ワタシもあなたに聞きたいことがあります」