(浮いてる……!)

 優希の目の前から二人が消えたと思った瞬間、刀が交わる音が空から響く。
 はねるように上を見ると、空中に浮いた状態で紅夜と治臣が戦っていた。

「春陽」

 落ち着きを取り戻した様子の奏太が声をかける。
 しかし、奏太の瞳はギラギラした輝きを放っていた。

「僕のキューブでの空中移動は、春陽と違って主力じゃないから細かい調整が出来ない。春陽は篠崎さんを優先して」

「うん!」

 春陽が頷くと弓矢を構え直した奏太は空を睨む。
 紅夜と治臣の力は拮抗しているようだった。

「僕は紅夜さんの援護をする」

「それなら、俺は対象者のまわりを守りながら様子を見てるがいいか?」

「はい。よろしくお願いします」

 薫、奏太、春陽が目を合わせて頷き、それぞれの行動を取り出した。

「優希ちゃんここから離れるよ!」

「春陽先輩?」

 春陽が優希の手を引いて走り出す。

「優希ちゃんは私が守るからね!」

「――それは無理かもね」

 手を繋いで走る二人の近くから凜とした声が聞こえ、春陽は横へと素早く移動する。
 急に方向を変えて引かれ、ぶつかる形で春陽に受け止められた優希は自分達がいた場所に長いリボンが叩きつけられるのを見た。