「え……」

 人々の思い出を守る紅夜達を咎める言い方に、優希は戸惑いの声をあげる。

「そちらの新入りさんは、あなた方の残酷さをよく分かっていないようですが……」

「黙れ!」

 声を荒げた紅夜がキューブを変形させながら北上との距離を縮めた。
 紅夜と北上は互いに刀を持ち、刃を合わせたことにより鋭い音が鳴る。

(北上先生のキューブが二つ……!)

 キューブが変化した武器は同じくキューブが変化した武器でないと対応出来ない。
 紅夜の刀と交わえると言うことは間違いなくキューブが武器化したもの。
 しかし、北上は最初に両手に刀を持ち、今は一つの刀に左手首にチェーンに通されたキューブが揺れていた。

「治臣(はるおみ)、いつの間に増やした……」

 北上――治臣は紅夜の問いに微かな笑い声をもらす。

「うらやましいですか? ――まあ、質問に答えるなら最初からと言えますが、ね!」

「く……っ!」

「紅夜さん……!」

 治臣は笑顔で紅夜の刃を払う。
 紅夜は表情を歪めながら距離をとって体勢を整えた。

「奏太、大丈夫だ」

 奏太は弓矢を構えて紅夜に頷く。
 薫が再度盾を構え、治臣から目をそらさない。


 治臣は刀を構えたまま奏太に視線を送り、次いで春陽を視界に入れる。
 見られた二人は厳しい顔つきで彼を見返す。

「双子の君達も辛いでしょうに。列車を見るのは嫌でしょう?」

「――……っ!」

 双子は息をのみ体が強張る。

(春陽先輩? ……あ……!)

 春陽を心配した優希が彼女を見ると、映像が浮かび上がり始めた。