「お待ちしていました」

「どんな悩みでも私達に相談して下さいね!」

 女生徒は会釈をしてから椅子へと座ると、眉を下げた表情で優希へと視線を送った。

「この人は……?」

「彼女は今日から僕達と相談をお受けすることになった、助手のようなものです」

「安心して下さい。優希ちゃんは私達の友達だから大丈夫です! ね!」

「あ、はい……!」

 優希は三人の視線を受ける中、春陽に促されるままに頷く。

「それならよかった……」

 優希の様子に微かな笑みを浮かべた彼女は、悩みを打ち明け始めるのだった――。





 時計が午後六時を指した頃、最後の相談者を見送った。
 奏太達が受けた相談は、勉強のことから恋愛について、喧嘩をした友人との仲直りの方法など様々で。
 二人が慣れた様子で話す姿に、優希は時折意見を聞かれて話す以外はただただ感心していた。

「先輩達すごいですね……。色々な悩み相談にのられてビックリしました」

 机と椅子をもとの場所に片づけながら言うと、双子はそろって首を横に振る。
 二組みの机と椅子を戻した奏太が窓際へと歩いて行き、優希からは表情が見えなくなった。

「僕達は、少しでも紅夜さんの力になりたくてしているだけです」

 窓に映る自分の顔越しに帰り行く生徒を見ながら奏太は真摯に言う。

「春陽達は生徒の相談にのって思い出の守りが必要かどうか判断しているの。休み時間に同じクラスの子の相談にのったことがきっかけで、今は先生から許可をもらって空き教室を使えるようになったんだ。――今日の人達は急いで守りが必要な人はいないみたいでよかったよ……」

 春陽は瞳を細めながら幾分か声のトーンを抑えて続けた。

「現実でもそういった活動をされるんですね」

 二人を交互に見やって感心したようにこぼす、片づけ終わった後輩の手を春陽が自分のそれでそっとつかむ。

「人の思い出はたくさんあるから、少しでも多くの人に触れたいって思ってるんだ。優希ちゃんと知り合えたのもご縁があったからだし、仲間で友達だと思ってるんだよ?」

「春陽先輩……」