【初side】

春。私は高校二年生になった。

名前は 月宮 初(つきみや うい)


「端正で可愛い顔立ちしててまるで天使」

「綺麗な長い茶色がかった髪は本当綺麗」

「細いくびれと、うつくしい膨らみのあるバストとヒップが素敵ですね」

「私も貴方の様な、白くなめらかな肌と、大きく、美しい瞳がほしい」

成績優秀。才色兼備。眉目秀麗。

そう言われ続けた。

だからそれが私の取り柄。

小さい頃一人で、数秒でそこらへんに転がったルービックキューブを解いてしまった事で発覚した、人より高いIQ178。

そこからだ。
周りの、自分へ向ける目が本格的に変わって来たことを

実感し始めたのは。

才色兼備の絶世の美女。

家は裕福。品のあるオーラ。

ついたあだ名はシュールに

“お姫様”や“プリンセス”

あるいは

“皇女閣下”や“お世継ぎ様”


「おはよ~初ちゃんっ♪」

「どーも」

後ろから突進してきたのは

朽木 天佑。
中学二年の時に同じクラスになって

知り合った時から、何かと絡んでくる。

クセのある天然パの茶髪。整った顔立ち。ふざけた笑顔。

学校では、人気者の王子様。
でも、朽木は二番目。一番目は・・・

「つれなーいなぁ~」

「朝から何やってんだ・・・。よう。皇女様」

彼、矢沢 蓮斗。

男にしては少し長めの黒の直毛に、端正な顔立ち。

二人は幼なじみなんだとか。


まぁ、本当。「で?」って感じだけど。

ママは、私を産むと同時に死んでしまったらしい。

今でも時々考える。

「どうして、私じゃなかったんだろう」

そんな私のつぶやきは、朝からうざったい二人の話し声にかき消されてしまっていた。