読んでないとは何ぞや。


わたしが黙り込むと、それだけで和泉くんは察したらしい。


『気付かなかったならいい』


えっと、ちょっと待って。


平淡な和泉くんの声に必死で頭を巡らせる。


和泉くん怒ってる? ううん、これは怒ってるときの感じじゃない。

悲しんでる? 照れてる?


分からない。なんか全部違う気がする。


でも、でもだ。

分からなくても、ここで諦めたらいけない。


「やだ、教えて」


ふくれたふりをして聞いてみる。


『嫌だ』


感情の読めない和泉くんは、聞いても怒らなかった。

ほら、やっぱり怒ってない。


ってことは、マイナスの感情じゃないってことだ。


というかですね、嫌だってなんですかね。


何かしてくれたのは和泉くん、

それをわたしに教えちゃったのも和泉くん、


つまりわたしは悪くないもんね。


なんて、不遜に言ってはみるけど、ちょっぴり不安。


でも、でもね、聞きたいよ。


「教えて、和泉くん」


だって、和泉くんが好きなんだ。