後ろから伸びてきた腕が首に巻き付き、頭に頬擦りされる。

香水の事は詳しくなくて名前は判らないけど、私の周りでこの甘くて優しい香りを纏う人はただ一人。

「恵美さん」

高卒の私とは違って、秘書課に居る才色兼備の大卒の同期で、お姉さんの様な存在の平山恵美さん。

外見が派手な私が、会社のお姉さま方から目の敵にされる事無く過ごせているのは、彼女のお陰な事は間違いない。

入社したばかりの頃は、会社のお姉さま方の視線がかなり冷たかった。

外見が整った高卒の若い女の子は、どうしても男性陣の視線を集めるから、仕方ない事だ。

人当たりの良い彼女を通して知り合った秘書課のお姉さま方から、『ナニ、このかわいい生き物』と言われて、可愛がられ始めてから漸く受け入れて貰えた。