ポチャンッ
「ん、ん……」
ゆっくりと目をあけた緋音の前にはある男の頭が机の上にポンッと置いてあった。
「ぎゃあっっ!!!」
ブルブルと震える緋音の手と足はロープで縛られていた。
「あ、、あ、あ、、」
泣き叫びたいのに声が出ない。
机の上にある男の頭はどこかでみたことあるものだった。
「おはよう、お嬢さん」
「ッ?!」
緋音の後ろからいきなりでてきた黒服の男は緋音のそばによってきた。
「なに…するの…?!」
弱気にそう言うと男は笑った。
「なにって……覚えてませんか?俺の事。」
「覚えて…?」
緋音の反応をみて、男は頭をかいた。
「あー、記憶喪失でしたね。…じゃ、改めて…初めまして、緋音さん」
「なっ?!なんであたしの名前…」
緋音は驚いた顔できいた。
「……まあそんなことはどうだっていいんです。あなたが手に入ったんだ。ボスの所に連れていかないといけない。」
そう言うと男は緋音のロープを丁寧に外した。
「なんでロープをはずしてくれるの?」
泣きながら聞く緋音と正反対の顔をしながら男が言った。
「逃がせようとしているわけではないですから。逃げたら手荒にしますよ。」
緋音は何を言っているかわからないと言った顔をしながら立つために男の肩に手を置いた。
「…」
「どうしたのですか?」
男は緋音の手を取りこちらです、といいながら聞いた。
「いや…なんか優しいですね…」
緋音は先程から丁寧にロープを外してくれたり、手を取りエスコートしてくれたり、しまいには言葉も普通の悪人とは考えられないくらい優しいと感じていた。
緋音から言われた男はとても驚いた。
「初めて言われましたよ、そんなこと。」
そう言った男の顔はどこか遠くを見ているようだった。
「安心してください。俺はあなたを解放するつもりです。」
「えっ?!」
「もともと、あなたを捕まえたのも幹部のうちの一人になるため。あなたが逃げたなんて部下のせいにすればいいだけですし。」
「でもバレたら…」
「あなたが喋らなければいいだけです」
「…」
「命が惜しくないんですか??」
「それは…」
緋音が黙っていると男はいった。
「…つきました、ここです。」
緋音が顔を上げる。
そこには大きな扉があった。
ギギギ………
「…ボス、連れてきました。…??」
「どうしたんですか?」
緋音が聞いた瞬間、いきなり銃をもった男が出てきた。
「ジ、ジンカワ…!!」
パンッーーー
銃声が響きわたった。
「きゃああああ!!!」
「に、にげるんだ…」
「あ、あ、ああ、で、でも、、」
「あ?なんだあ、キリタニ。お前、裏切ろうとしてたんだろ?」
「キリタニ…?!」
「ハッ、笑えるぜ。お前はもうボスの後継者となっていたのに幹部のうちの一人になりたい、とはな。今の方が大事か??」
わけがわからない緋音は逃げる準備を少しずつしていた。
「ジンカワ、お前にはわからないだろうな。お前こそ、ボスの命を狙っていたくせに。」
「まあな、俺がなりたいのはボスそのものなんだよ。だからお前がいるとじゃまでしかなんないんだよ!」
「邪…魔、、??…ウッ…ウウ…」
緋音がいきなり頭を押さえてしゃがみこんだ。
それでも逃げて朔たちに知らせなければならないため、頭を押さえながらも脱出した。
「ジン、カワ…あの娘はいい、のかよ…」
「俺の計画では最後の最後であの女をボスの目の前に連れてくるって計画だからな。今はいらねえ。」
「ウッ」
傷口からドクドクと赤黒い血が出てくる。
キリタニと呼ばれる男は必死で撃たれたところを抑えて立った。
「まだ立つのか。もう勝ち目はねえだろ。あ、殺す前に教えてくれよ。ボスはなぜあの女を欲しがる。」
「俺が、答えると思うか…」
パーンッ
ドサッ
「チッ。まあ、ほかのやつに聞けばいいだろ。」
ジンカワは建物からでた。
「じゃあな、キリタニ。」