「遅刻してすいません!!!」

勝が捜査会議をしているのにも関わらずでかい声で入ってきた。

「勝、こっちだ」

小野寺が勝にOKサインを出したと同時に朔が勝を呼んで手招きした。









数時間前~


「課長!!!」

「なんだ??何かあったか??」

朔が小野寺を呼び止めた。

「勝ですが、昨日の夜から朝方まで起きっぱなで緋音の看病をしてたんで、遅刻します」

「そうか、わかった」





朔がこう言ったから勝は怒られなかった。




「なあ、朔。なんで俺怒られなかったんだろ」

「しらねえよ」

朔がすこし笑いながら言ったから、よけい勝は知りたがった。
でも勝が朔にその理由を聞かなかったのは、朔が久々にいたずらっ子のような笑顔を見せていたからであった。

朔も母親たちが死んだ後から、あまり笑う機会も少なくなっていた。
だからこそ、勝はうれしかったのだろう。


「では、会議解散!!各自持ち場へ急ぐように!!」

小野寺の声で小さな小さな捜査会議が終了した。
各自と言っても、この特別刑事課にはそんな人がいるわけでもない。


小野寺をはじめ、朔や勝、凛子のほか、5人いる。
この9人プラス辻や大門、緋音の3人だから………12…ではあるがやはり少ない。


しかも、特別刑事課ののこりの5人は、もうすぐ辞表を出すだろうと思われる者ばかりだ。

この特別刑事課は大きく分けて2つの意味がある。

1つは朔や勝、小野寺に凛子と、明確な目的があってここにいる。いわゆる、捜査一課では手に負えない事件を担当する人や、頭がキレる人の課。

もう1つは、やめてもらいたい人たちを送り込む場ともなっている。

テレビでよくあるパターンだが仕方のないことなのだ。



「課長!!」

勝がまだ新しいスマホを耳につけながら大きな声で小野寺に言った。

「また1人辞表提出しました。」

その声には、うれしいともかなしいとも感じとられなかった。

「そうか、わかった。……勝は朔と一緒にキリタニという男について調べてくれ!!!」

「はい!!!」