「伊織くんって今働いてるの?」

ココアを手に持ち、伊織君に尋ねる。

伊織くんは私の向かい側に座ると、コーヒーを手に取って一口飲んだ。

「薬剤師だよ。一応」

「へぇー。格好いいね」

「ありがとう」

私もココアを口に含む。甘くておいしい。

制服姿で来た私をじろじろと見る伊織くん。なにかおかしいだろうか。

「伊織くん?」

「……あ、ごめん」

「?」

いきなり謝る伊織くんに思わず首をかしげる。

変なの。

「もう遅いから家まで送っていくよ」

「いいよ。近いし…」

「だーめ。何かあったらどうするの」

ココアを飲み干し、伊織くんに渡すと伊織くんはそれを流しに入れた。外はもう真っ暗だ。日が落ちるのは早いな。