私はリビングのソファに座り、伊織君はキッチンに立って何かしていた。


「久しぶりだね。今いくつだっけ」

「うん。ひさしぶり。今年で17だよ」

「年月は過ぎるのは早いね…。周(あまね)は元気?」

周とは私の弟で今中学二年生だ。

「元気だよ。テニス部に入ったらしい」

「へぇ。あの泣き虫がね」

「うん。あ、はい。これモモ。おいしいよ」

「ありがとね。わざわざ」

笑顔でモモを受け取る伊織君。

「これ、ココア。前好きだったよね」

「うん。今も好き」

甘口のが特に好き。

伊織君はけっこう身長が高い。きれいな黒髪で、前髪が邪魔なのか今はヘアピンで留めている。

「よかった」

心底安心した顔をする伊織君。やだ、かわいい。