『はい』
インターホンの奥から聞こえた声は機会を通しているせいか、聞いたことのない声だった。
「こんにちわ。原本さんのお宅であっていますでしょうか?」
伊織くんの苗字を言い、本当にあっているかを確認する。
『はい。原本ですが』
「昔近所に住んでいた滝沢です。母に頼まれてモモを届けにきました」
『はい、開けます』
随分と他人行儀なあいさつを交わし、自動ドアが開いたのを確認して中に入る。
桃が意外と重い。
エレベーターで7階まであがる。このマンションは20階立てのようだ。伊織くんは7階に住んでいる。
ピンポーン
もう一度玄関のところでチャイムを鳴らす。家の中から軽快な音が聞こえてきた。
「いらっしゃい。あがっていく?」
ラフな格好をした伊織くんと思われる人が出てきて私を家へ招き入れた。