彼女は不気味に笑い、顔を伏せ決意を固める――。


そしてゆっくりと顔を上げると、彼を見つめる眼鏡の奥の瞳が彼女の意思を決行する――。




「エマージェンシー記憶消去モード――ステッキさんっ――」


「うむ――」


相棒である棒状の先端部を彼に向け、彼女が意思を示し「相棒」が低く応え、乙女チックな装飾部が発光し、高速で回転する――。


「えっ――」


彼はポカンと呟いたが、すぐに目の前の「現実」と向き合わなければ本当に記憶が消されてしまう――実際、ためらいがなくなった彼女は、その気の様だ――何とかしないと――。



「ちょっと待った――」


彼は声を張り上げ、一か八かの賭けに出た――。




「何故、ここにいる――」


彼の知る数少ない「ネタ」に全てを委ねた――。


彼女なら、わかってくれる筈――。


そんな淡い期待を込めて――。


「ふっ――」


彼女は「そう来ましたか」と彼の想いを理解し、口元を緩め、応えた――。




「テルっ――」


「わたしは――」


「認識番号――」


「11777番――」


「魔法少女――」


「りおんです――」