「どら焼き、食べる――」


「今日でテルくんと逢うのも最後かもしれないから、玉露のお茶もつけてあげる――」


「もう、転校確定かよ――」


サユリなりの気遣いに、彼の心は落ち着きを取り戻し、無意識に正座になって差し出されたどら焼きにかぶりつく――。




「それにしても、テルくんの周りで起こる現象は、見ていて飽きないわね――」


電気ポットから急須に湯を注ぎ、しばらく蒸らして湯呑みに香ばしい液体を解放するサユリ――。


給湯ボタンを、「かぽっ」と押す仕草が、らしくなく、可愛い過ぎる――。



「はい、どうぞ――」


一口、啜る――。


「はぁ、この苦味が落ち着くな――」


彼は、そう言って優しく両手で包み込んでいた湯呑みをゆっくりとテーブルの上に置いた――。




「本当に、転校するかも――」


「あら、随分と弱気ね――」


「今日の生徒会の流れから想像すれば、生徒総会もこのまま――」



「さぁ、どうかしら――まだわからないわよ――」


励ましているのか、それとも「流れ」が変わる確信を得ているのか――サユリの眼差しは妖艶で、力強い――。