「こらぁーっ、チャイム聞こえなかったか、席につけぇ――」
担任の桜先生が入室する――。
桜――その名前が示す通り、第一印象は淑やかでミナ、繭、ルナを足して、茜の実直さを加えた数で割り、端数を大人の「色」と「経験」で埋め合わせた容姿に妖艶な声――。
がしかし、それらを「裏切る」様な姉御肌の性格――。
容姿と性格の絶妙なる「落差」――故に、この学院の特性上、生徒からの「支持」は厚い――。
「7月には水泳授業もあるからな、楽しみにしてろっ、テル――」
ミナが彼の耳元で艶かしく囁く――。
「ミナっ、テルに卑猥な妄想を掻き立てる誘い言葉を言うんじゃないっ――」
「てへっ――」
おどけて席に戻るミナ――。
「いいかぁお前ら、衣替えで身軽になったからといって自分を安売りするなぁ――」
「男はそこに漬け込んで、支配しようとするぞぉ――」
「逆にそこを利用しろ――押して引いて、押すと見せ掛けて引くだろうと思っているところを、押してゆけぇ――そうやって男を惑わし、手玉に取り、転がして実りのある人生を築いてゆけぇ――わかったなぁ――」