彼は、念願の「邂逅」を果たした――。


あくまで自然に出逢い、語り合う為に用意された静かで美しく、誰も知らない秘密の舞台――。


ルナは、全てではないにせよ、その在り方と気持ちをほぼ、初対面の彼に晒した――。



下界を「遮断」する森――そこはかとなく咲いて、心を潤す花の色彩と香り――。


感情を癒す鳥達の歌声――。


どれが欠けてもいけない、「秘密」の空間――。


この空間だったからこそ、「意固地」、「気難しい」とマリネが評したルナは沈下し、「素直」で「可愛らしい」性格の「層」が魂に、皮膚に浮かび上がり、彼を受け入れた――。


彼も、自然に気持ちを表現した――あまりに出逢いが「突然」だった為に、妙な「構え」を創る余裕すらなかった――。




それが良かった――。


意図的な空間と、繕った意思は、戯れ言の応酬に終始する――。



互いに得るものは、何もない――。






「あっ、ハンカチ忘れてる――」


彼はハンカチを几帳面に折り畳み、制服の胸ポケットに入れた――。



仄かに、ルナの香りが漂い、甘い記憶へと昇華してゆく――。