「か、可愛い――私が――」
彼の意外な発言に、顔が上気し、ルナは譫言を呟き始める――。
通り名に恥じない、勇ましく凛とした佇まいを見せるかと思えば、まるで世間を知らない箱入り娘の様な、無垢でまっさらな側面を彼に晒す――。
強くて弱い――。
大胆で繊細――。
硬くて柔らかい――。
冷たく温かい――。
相反する要素が、奇跡的な均衡を保ち、ルナをルナたらしめている――。
魂で複雑化された情念がろ過され、躰から滲み出るルナの心の上澄みを彼は、「可愛い」と読み取り、言ったのだ――。
スズメやシジュウカラ達が彼らなりにルナを励まそうと近づき、歌声を上げながら地面をついばむ――。
「なぁルナ、この場所の事は誰にも言わないから、たまにこうして二人で話さないか――」
「たまにしか来れないよ――」
「うん、そのたまにがいいんだよ――」
「いいよっ――」
弾んだ声で彼を受け入れた――。
彼は、また新たな「憩いの場所」を手に入れた――。
「バサッ――」
鳥達が慌てて上空に舞ってゆく――。