素知らぬ顔で、藤組内部を確認する――。


いない――。


彼は、部室へと急ぐ――。




「はぁ――」


いる筈のサユリがいない事に彼は落胆した――。


今日は休んだのだろうと、勝手に解釈し、天気もいいので森を散策しながら、サユリに相談したかった「懸案事項」を考えようと外に出た――。




僅かな風が、枝を揺らして葉が歌う――鳥達の囁きと重なり合う響きが、両耳から侵入し、脳内の汚れを洗浄する――。


どんぐりを口の中に含んだリスが、こちらの動作を伺いながら、周回路を横切ってゆく――。


噂では、タヌキも何処かに生息しているらしい――。


数人の女性徒、「ペア」の彼女達と擦れ違うも、こちらも、向こうも、軽く会釈をするか、彼女達側が彼を無視するかのどちらかで、彼の「男」としての賞味期限が切れている現実を彼女らなりに、態度で表している――。


都合の良い時は、「空気」――都合の悪い時は、「標的」にされる――。


なんて、大人ぶって歩いていると、周回路から枝分かれする小路が、彼を誘う様に口を開けている――。



ただ、草が踏まれた獣道――。