「んで、ハーレム帝国の王として、どんな感じよ――テル――」


彼が席に着くなり、教室に響き渡る声で問い、机の端に腰掛けて、しなやかに足を組み、勝ち気な目で返答を待つミナ――。




「ハーレムねぇ――そんな風に思ってもいないけど――」


素っ気なく彼は返した――しかし、同時に安堵していた――。


ようやく、「会話」らしいやり取りを交わしたのは、これが最初だったから――。


それに、ミナは彼と同じ中学の出身で、クラスこそ一緒になる事はなかったが、その物怖じしない性格と、相反する端麗な容姿で際立った存在感を示していた――。


からかいなのか――見るに見かねてのミナなりの「優しさ」なのか――彼はミナの気持ちを推し量る――。




「へぇ――意外と真面目だねぇ――こんだけ可愛い女の子を独り占めにできるんだから、もっと浮わついても良さそうなのに――」




足を組み替え、挑発気味に太股をちらつかせ、ミナは彼の置かれた状況の優位さを説く――。



「浮わついていられる環境かよ――男はオレ一人しかいないんだ――」



「ハーレムどころか――地獄って感じだな――」