故に、「気味が悪い」、「何かいそう」などと言い、旧校舎を部室にする部活以外の大半の生徒は、踏み入れる事のない、「過去」へと誘う渡り廊下の入口――。



「ちょっと、探検してみるか――」


以前から興味のあった旧校舎に通ずる扉を開け、彼は渡り廊下を進んでゆく――。


板張りの床、薄暗い廊下、重く湿り気を帯びた空気――。


誰もいないのに、不思議と怖いという思いはない――寧ろ彼の中では懐かしささえ覚える、適度な明るさと静かな空間――。


確かに、マイナーな部活の表札が点在するが、比率としては空き教室の方が多い――。


彼は2階へ降りた――僅かに耳についた新校舎の「ざわめき」も、ここまでは届かない――。



3階より、「マニアック」な名称の表札達――。




「人間観察部――」


その表札の前で、彼は立ち止まった――新校舎から最も離れた端の教室――。



中に人の気配を感じた彼は、意を決して古びた引き戸を開ける――。



中へ入ると、何故か小上がりになってコタツが置かれ、その中で独り温まり、頬杖を突き、儚げな目で外を眺めている女性徒がいた――。