いつもはルナに借りるか、それが叶わない時は、左隣の窓側に座るミナに見せてもらっているが、今日に限ってマリネは彼に懇願した――。
状況を把握したミナが、軽く下顎を突き出す様な仕草で、「見せてあげな」と彼に促す――。
因みに繭の席は、ミナの席から2列前方にある――。
「わかったマリネ――後で机、くっつけるからな――」
「お願いしまぁすぅ――」
とびっきりの笑顔を彼に放つマリネ――。
本当に「忘れた」のか――いや、これもマリネなりの気遣いなのだろう――ミナ、繭、茜も彼をいち早く受け入れ、力になってくれる――。
まだ、挨拶や、軽い会話を交わす程度のクラスメイトも、彼女達の尽力もあり――概ね好意的に彼を捉えている――。
心の奥底で、ちょっと迷い弱っていた彼も、この学院での日常を紡いでゆこうと想いを改める――。
しかし、黒く蠢く思念は、じりじりと静かに彼の周りに強かに漂い、潜む――。
「うへへっ――」
早くもマリネが、机を「合体」させた――。
「もうかよっ――」
「でへぇ、だって嬉しいんだもん――」