最終的に残った「異物」が、彼一人だった――。
入学辞退の噂は、彼自身も耳にしていた――が、まさか自分だけが「取り残される」など、思いもしなかったに違いない――。
「すまん――やっぱサッカーに専念したいから――」
「僕も、大学進学、就職を考えて公立の進学校に行くよ――」
一緒に受験した仲間達の辞退の言葉――。
「そうか――頑張れよ――」
その言葉しか、彼に選択肢はなかった――辞退した仲間を責めても、何も解決しないし、前進もしない――。
受験の「理由」はどうであれ、仲間の選択は尊重されなければならない――。
全ての辞退者が、その様に自らの行く末を定め、下した決断なのだ――と、彼は自分に言い聞かせ、腹を括った――。
入学式は彼にとって振り返りたくない思い出かもしれない――――ざわめく体育館――在校生の戸惑いなる目線――新入生達の排他的視線――教職員、父兄らの興味本意な眼差し――。
両親が仕事の都合で来られなかった彼は、「一人」で全ての念を受け止め――耐えた――。
そして、初登校から2日が過ぎた――。