しかし、行き掛かり上、学級委員になったとはいえ、「あの」生徒会室の独特の雰囲気に彼は未だに慣れる事がない――。



「まだ感じが掴めない――」


生徒会に出席する道すがら、共に廊下を歩いていた茜が、彼の表情を僅かに覗き、尋ねる――。



「蛇に睨まれた蛙――」


「ふふふっ、何となくわかる――」


口元に手をやり、悪戯っぽく茜が笑う――。



秋桜、藤、椿組――3学年の学級委員18名に、生徒会役員が加わる委員会は彼にとって、「苦行」であるに違いない――。


学級委員の仕事を示すものではない彼の「苦行」とは、あの空間に漂う彼の存在を否定するかの様な冷気と、表向きは歓迎しているという瞳の奥から覗かせる、本音の視線を意味し、感じているものである――。



明らかに「否定派」を匂わせる場の雰囲気――ごく一部であっても、その存在は彼が茜に形容した言葉そのもの――。



全ての男の「指標」になった彼独りに、否定派の嫌悪な念と目が集中する――。



「学級委員の仕事は私もフォローするから、頑張ろう――」


茜が優しく気遣う――。


「ふふっ、それと――」