まるでお伽噺――。


「納得してもらえた――」


「あ、あぁ――だが、記憶消去は勘弁してくれ――」


「んーっ、まっいいか――テルだけわたしの正体を知っている設定も、これはこれで――」


「りおん、昼休みも15分しかないぞ――」


「えーっ、急いで教室に戻ってお弁当食べないと――テルっ、ちょっと後ろ向いてて――」


「わ、わかった――」


背中に、光と熱が伝わる――。


「もういいよ――」


振り返るとりおんの出で立ちは、見慣れた夏服に変わっていた――。


「べ、便利だな――」


魔法少女を総括しての彼の感想――。


「そうか、椿組だったな――」


胸元のリボンで改めて言った――椿組という事は――。


「むふふ――」


彼の「懸念」を感知したりおんは、少しいやらしく笑う――。


「ルナちゃんと同じクラスでございますよ――いやぁ、まさかルナちゃんがあんな行動に出て臨時生徒総会が荒れるなんて――」


「ルナちゃんはテルの事、好きなのかなぁ――ぐへへ――」


あらぬ妄想がりおんの脳内で爆発する――。


「もう、つき合ってるの――あぁ、ちょっとツンデレっぽいルナちゃんがテルとあんな事やこんな事――ぐふふっ――」


「りおん、ヨダレを拭け――」


小型化し、胸ポケットに収まったステッキさんが妄想を制御する――。


「いやいや、わたしもそこまで無粋じゃありませんよ――後は若い者同士で――むふふふっ――」


お見合いの仲介人の様な口調と妙な後ろ足で、ドアへと後退するりおん――。


「またお会いしましょう――では、ごゆっくり――」


そう言い残し、静かにドアを閉め、ご丁寧に施錠するりおん――。


「いや、つき合ってないよ――」


彼が「りおん劇場」から脱し、ドアに「戯れ言」を投げても時既に遅し――。


「はぁ――」


りおんが「戦っていた」宇宙(そら)眺め、彼は息を解き放った――。


不思議と不快な感情、感覚はなく、魂は笑っていた――。