走る前にふと周りを見渡す。
あいつは俺の走りを見たことはない。
一緒に走ることはあるがそれ以外では見に来たことがない。
でも少しだけ期待する。
もしかしたら来てくれているんじゃないかって。
すると、奇跡が起きたのか。

―あいつがいる!!

前に『ライバルの走りは見るつもりはないの』とか言ってた奴がどうしてここに!

あいつも気付いてこっちに向かって手を振る。
ん?何か言ってる。


『が・ん・ばっ・て』


体が熱い。
そして絶対、顔赤い。

俺は顔を隠しながら小さく手を挙げた。